Friday, September 16, 2011

古賀茂明が語る日本の電力会社の権力のカラクリと期待できない野田政権

このブログでもすでに、経産省の改革官僚の古賀茂明氏については触れたが、今日は9月13日の「ニュースの深層」に出演した古賀による日本の権力のカラクリと野田首相の所信表明の分析を紹介したい。(是非、下のリンクで本人自身の言葉を聴いていただきたい。)

Youtubeでは3部に分かれてアップされているので、それぞれの内容を順序下記で紹介していくが、核心部分は第2部だ。ここで焦がしは非常に解り易く日本の権力構造のカラクリを明らかにする。第3部は野田首相の所信表明分析。一言で言えば、野田首相は何もわかっていない。一部の要約内容にざっと目を通していただき、第2部からご覧になることをお勧めする。

一部:公務員改革、座敷牢、枝野新経産省大臣について

主に上杉による古賀氏の紹介だ。古賀氏はもともと自民党時代に公務員制度改革に尽力した人物だが、これゆえに霞ヶ関全体を敵に回してしまう。民主党に期待するも裏切られ、省内でも仕事を与えられずに19ヶ月のあいだ実質的な「座敷牢」生活を強いられる。(この辺の詳しい経緯については『日本中枢の崩壊』が詳しい。)

古賀氏はもう役所を辞めることを大臣に伝えたとのこと。

枝野新経産省大臣については、業績という面で何もない人であるとバッサリ。口は達者で、いろいろいうが何をいっているのかはっきりせず、そこが霞ヶ関的には「安定感」ということになる。





2部は、それまでの「座敷牢」ではなく、もっと激しい古賀追い出し対策が始まったこと、とそれがなぜなのか、から始まる。こ の2部が核心部分ともいえる。古賀氏は恐らく電力会社の逆鱗に触れたことが理由だろうと推察。どうして電力会社には官僚の人事を動かすような権力があるの か?

電力会社の権力の源泉

*地域独占である為に、絶対に事業に失敗しない。
*総括原価方式である為に、コストそのものに利潤を載せることが許されている。つまり、コスト削減という経営努力をしないことで利潤が増える仕組み。(総括原価方式についての説明はここをクリック。)    

古 賀氏はこの仕組みがどう権力基盤につながるのかのカラクリを説明。コスト削減の必要がないどころか、コスト高であればあるほど儲かる電力会社は非常に発注・購入額の大きい企業。受注側の企業にとっては、高値でなん でも購入・受注してくれる非常に有難い顧客となる。この為に経済界は電力会社に足を向けては寝られない。電力会社には全く逆らえない。気に障るようなことも いえない。

さらに政治家への睨みも利かせている。地域経済そのものが電力会社により\潤うので、電力会社に嫌われる政治家は当選できない。 自民党議員は地元の経済界の応援で当選するので、電力会社には逆らえない。民主党は電力労連に抑えられており同じこと。連合のなかでも電力産業の組合は非常に影響力。連合が議員に踏み絵を踏ましている。

監督官庁の経産省はといえば、実は電力料金には税金が入っている。これに気づく消費者は少ない。広く薄くとっている。これが経産省のコントロールする特別会計に流れる。このお金を手放したくない経産省は色々いえない。


それに経産省が送電分離など電力会社の嫌がることをやろうとすると、政治家を使って圧力をかけてくる。人事で圧力かけたり、電力とは関係ない法案を通そうとする際に嫌がらせされる。

経産省にとっては、電力は大切な天下り先だが、経産省が力をもって天下りをさせているのではなく、OBが人質に取られているイメージ。つまり、 「言うことを聞かないとこの天下りポストはないよ」ということ。警察あるいは他の省庁からも満遍なく沢山天下っており、霞ヶ関への影響力大。

また、電力会社は官僚の子弟を雇用することでも影響力を行使。政治家の子弟も同じこと。 

 (追記 例えば、自民党の石破氏の娘も東電だ勤務だし、日刊ゲンダイによるとなんとこともあろうに原子力保安院の西山氏の娘もやはり東電勤務 (2011年4月27日付記事 リンクはココ)。

司会の上杉隆はここで、警察の天下りに見られるような国家への食い込みにより、電力会社は事故を起こし被害を出しても、生ユッケなどとの場合と異な り、誰も捜査の手が入らないのか、と指摘。日本はドイツ、米、仏のメディアがいうように原子力国家、原子力マフィア、原子力ロビーの国。

ここでメディアと電力会社の問題。電力会社の広告額は膨大。古賀はメディアの広告収入に一社が占める比率への規制があるべきと主張。 (上杉による と諸外国ではこういった規制のある国が多いとのこと。東電800億円、パナソニック700億円 トヨタ億円。一社が抜けると経営成り立たない、と上杉。) なぜ独占企業体に広告が必要なのか?


メディアの人間が電力会社に接待されお友達になってしまっている。電力会社のトップに可愛がられたり、ダイレクトに電話きる関係にあることを自慢する報道の人間がいる。全くの癒着。


発送電分離などで競争を導入する。しかも、発送電分離が主流。なぜ、河野太郎くらいしか発送電分離という政治家はいない。

古賀はここでまたさらに提言。消費者からすると電力料金は税金と一緒。なのに、コストの内容は秘密。電力会社は請求書一枚一枚開示すべき。 ところが、そうすると民間会社だと言い訳する。理不尽。


3部 当たり前のことが通用しない原子力国家日本、東電処理策の問題点 野田政権所信表明の中味のなさ


東電救済策とも揶揄される処理案だが、古賀は禍根を残すのではないかと危惧する。中国などが海洋汚染での賠償請求を準備している。現在の東電処理策だとういった一切合財の賠償金が政府にかかってくる。日本国家そのものの存続が危うくなる。政府もメディアも状況認識が甘い。

官僚は答えのない問題解決は苦手。過去問などを勉強して試験が得意な人たち。東電処理策も過去の類似事例(JALやチッソ)をずらあ~と並べて研究。「でも昔の例と違う」なると思考停止に陥る。

野田政権の所信表明  増税への道筋を見ているだけ。経済の真の問題が何なのかわかっていない。財務省もわかっていないのだろう。確かに予算の為に44兆円の赤字国債発行がある。税金20%上げれば一年分の赤字は消せても累積赤字が消えるわけじゃない。縮小していく経済をどうするのかが本当の問題。全くこの問題の解決策がない。

成長と財政再建を両立させるという抽象論のみ。中味がなさすぎ。

成長産業として、環境エネルギー・医療・農業というが、いずれも規制でがんじがらめの産業で、規制緩和の気配はない。なぜなら、電力会社、医師会、農協などが強い部門。に気を使い政治家が強い者に媚びて、結局は弱い者にしわ寄せするから。増税することが闘う政治家みたいにしているが、つまり弱い者にしかけた戦い。

行政改革も公務員制度改革も全くなし。笑えるの事業仕分けの「深化」。大失敗だったはずなのに、この「深化」というのは役人言葉。過去の過ちをみとめない典型的語彙。







関連では:現代ビジネスの「総力特集 原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミこの国は電力会社に丸ごと買収されていた」 http://gendai.ismedia.jp/articles/print/4845