Saturday, January 7, 2012

東証、東電、オリンパス



読売新聞の1月7日付けのオンライン版の記事によると、東証はオリンパスを上場廃止にするつもりはないようだ。 理由は「虚偽記載の内容は重大だが、影響は限定的」だということだそうだ。長期にわたった組織的で非常に悪質な虚偽だったにもかかわらずだ。どう考えても、ライブドアよりずっと悪質だといえる。そして、気になるのが東証の判断基準だ。記事によれば、「上場廃止になれば、現在の株主が過大な責任を負う」(幹部)との判断があったという。ライブドアの上場廃止を決めた際に東証は「組織的に行なった点で上場会社としての適格性を強く疑わざるを得ない。投資者の証券市場に対する信頼を著しく毀損するものであると認められる」とコメントしたことと整合性がとれない。

ちなみにオリンパスとライブドアが誤魔化した額を比べると、オリンパスが過去の損失隠しに用いた費用は最大1348億円 (産経の記事による)、ライブドアが虚偽記載をしたといわれたのは50億円以下の額。しかも、オリンパスは非常に手の込んだインチキの企業買収劇を繰り返し、損失補てんのための額を捻出しようとする、いわば幾重もの虚偽のオンパレードだ。これこそ、「虚偽のデパート」と呼んでももいいくらいだ。

東証の基準の違いだが、裏にもう一つの本当の基準があると仮定すると、実は非常に整合性があることがわかる。株主にも貴賎上下の差別があるのだ。

ライブドアは小口の一般株主あるいはただの成り上がり者の堀江氏所有の株だったら、上場廃止で紙切れになってもいいが、オリンパスのように大株主が日本のエリート企業の場合は「株主が過大な責任を負うことになる」と¥困るのだ。

オリンパス筆頭株主の生命会社などはそれこそ人様の金を預かり投資していた金融会社なのだから、それこそ大株主としてしっかりオリンパスの経営陣を見張る責務があっただろう。その義務を怠っても、最悪の状況からは尻拭いして貰えるのが日本の(そして特に規制産業の)巨大企業だ。

挙句の果ては、経営陣が組織ぐるみで行った虚偽を明るみにだした前社長が悪者にされるという前代見物のストーリーだ。 国際的にも日本の企業のガバナンス問題として大きく注目されたにも係らず、ウッドフォード前社長を「非行」を理由に報酬減額処分にするというおまけつきだ。日本では正直者が馬鹿をみて、上を見て言われたとおり犯罪に手を染めるものが出世するわけだ。

オリンパスの「上場廃止なし」と、債権者の銀行も含めて丸抱えの東電の救済策とそっくりではないか。東電も大事故を起こしたが、政府はさも「影響は限定的」といわんばかりだ。福島第一の放射性物質で使い物にならなくなったゴルフコースも、東電のせいじゃない、危ない高線量地域から「自主避難」したら東電のせいじゃない。東電と利益共有する東芝・日立、ゼネコン、メディアは事故後も除染やら、お詫び広告でたんまり設けている。しかし、農地そして家畜を汚染された農家や酪農家は、国民に汚染された食品を消費してもらわないと経営が成り立たない。

つまり、株主に貴賎上下があるように、国民にも貴賎上下があり、賎しい一般国民は政府が引き上げた放射能基準に基づいて暮らし、東電に言われたように、(例え理由なく計画停電などイカサマをされても)有難く電気料金を払い、さらに東電の不始末の尻拭いに税金を上げられても、大人しく従うしかないのである。放射能は怖いと「放射脳」と蔑まれ、汚染された瓦礫を受け入れたくないというと非国民扱い。

大企業と利益共有する大企業は何をしても守って貰える。そして、それ以外の国民は黙って言われたとおり税金を納め、下らないテレビ番組でも見ていればいい、というのが今の日本の統治構造なのである。


オリンパス上場維持へ東証、違約金求める方向

東京証券取引所は、有価証券報告書に虚偽の記載をしていたオリンパスの株式について、上場を維持する方向で調整に入った。月内にも最終決定する。
 損失隠しが10年以上にわたるなど、オリンパスの社内体制に問題があることを投資家に周知した上で、違約金の支払いを求める方向で検討している。
 東証で、企業の上場審査や市場の監視を行っている「自主規制法人」が、オリンパス経営陣など関係者からの聞き取り調査をほぼ終えた。月内にも臨時 理事会を開き、上場維持を最終決定する。「上場廃止になれば、現在の株主が過大な責任を負う」(幹部)との判断もあるとみられる。
 だが、株式上場のルールを破って市場の信頼を傷つけたとして「上場契約違約金」1000万円の支払いを求めるほか、社内の管理体制や情報開示に問 題があることを投資家に知らせる「特設注意市場銘柄」にも指定する方向で検討している。特設注意市場銘柄に指定された場合、オリンパスは3年以内に社内の 管理体制などを改善しなければ、上場廃止となる。東証の調査では、損失隠しは一部経営陣だけで、極秘に行われた。損失隠しを行わなくても債務超過には陥っ ておらず、増資などを狙って株価を意図的につり上げてはいないことなどを確認している。東証は、「虚偽記載の内容は重大だが、影響は限定的」(同)とし て、現段階での上場廃止には当たらないとみている模様だ。
(2012年1月8日03時11分  読売新聞)リンクはここ

東証がライブドアを上場廃止にした際の理由は

東証は13日、ライブドアとライブドアマーケティングの株式を上場廃止することを決定した。両株式は3月14日から4月13日にかけて整理ポストに移管された後、上場廃止になる。

ライブドアとライブドアマーケティングの容疑について東証では「組織的に行なった点で上場会社としての適格性を強く疑わざるを得ない。投資者の証券市場に対する信頼を著しく毀損するものであると認められる」とコメントしている。


なお、ライブドアでは今回の告発について容疑内容を公開した。容疑は、2003年10月1日~2006年9月30日の連結会計年度に、本来であ れば3億1,278万円の経常損失が発生していたにも関わらず、売上計上に認められないライブドア株式売却益37億6,699万円や、ロイヤル信販と キューズ・ネットに対する架空売上15億8,000万円を計上するなどして連結経常利益を50億3,421万円と虚偽の記載を行なったというもの。引用のソース記事の リンクは
ここ






年が明けて

日本が置かれている現状を前に、めでたいとい気持ちにはなれない2012年の幕明けだった。日本はどうなるのだろう、というのが31日に就寝する際に頭に浮かび、1日に目が覚めてもやはり頭にこびりついたままだった。

元旦早々の地震、地震が原因とみられる福島第一4号機使用済み燃料プールの水位低下は、野田政権の「冷却状態」の達成、「第2ステップ収束」という広報以外の意味を持たない言葉の欺瞞を白日にさらした。

内閣官房参与を抗議の辞任をした、東京大学教授小佐古敏荘(こさこ・としそう)氏が5月に米紙ウォールストリートジャーナルのインタビューで話した通り、秋の収穫を迎え食糧汚染の深刻さがわかってきた。とはいえ、政府が少ないサンプルでの食品検査しかしていない以上、実際の汚染状況を過小評価している可能性があることは否めない。また、放射性物資はセシウムだけではないにもかかわらず、政府も大手報道機関も国民を啓蒙することはせず、ひたすら通常の生活を続けさせることに重きを置いている。

12月には東京に数日間戻り、友人・知人とも再会を果たした。街を歩きながら不思議だったのは、あまりにも皆普通にしていることだった。一方でガイガーカウンターでは事故前よりも高い数値がピッピとはじき出される。福島原発事故による放射線被害を心配する人たちのことを「放射脳」と揶揄するのは、すでにTwitterなどで見て知ってはいた。

何事もなくクリスマスセールをエンジョイする幸せそうな人々の様子をみると、自分と家族にとって重大な情報に対しても受動的な彼らを責める気には到底なれない。子育て、仕事、住宅ローン、長時間の勤務・通勤をしていれば、新聞の見出しを信じる方が効率的に違いない。

そして、新聞社やテレビ局の人間もその大半はやはり「なんとかなる」と楽観視しているに違いない。(とはいえ、自分らは原発の50キロ圏外逃げておきながら、枝野元官房長官の嘘の片棒を担いだ罪はいずれ国際的にも断罪されるであろう。)

だとしても、どうしても引っかかるのが、なぜ自分の頭でモノを考えようとしないのか、という点だ。日本人はかねてから、食品の安全などには神経質な国民だ。この点ではドイツ人に似ているともいえる。ところが、どうしてドイツと日本ではここまでも福島原発事故後の反応が違うのか?もちろん、日本には大きな原発利権が存在し、メディアと政治を牛耳っている。ドイツではSiemensが原発に関わっていたとはいえ、東電のようにメディアと政治を操っているわけではない。こういう構造的な違いはもちろん重要だが、なぜ国民の大多数がエックス線を浴びてはいけない妊婦が、福島原発の放射線だと浴びても大丈夫なのか、という矛盾を無視できるのか?この思考停止は何からくるのか?

福島原発事故のあとのプロパガンダの一つに、(正確には記憶していないが)線量が高くなっても東京だったら、一日の線量が胸部レントゲンを一回浴びる程度であるなど 、やたらレントゲンの例が使われた。じゃあ、どうしてレントゲンのときのように若い女性だったら腹部に鉛のエプロンをしなくてもいいのか?妊婦は浴びちゃまずいじゃない、とすぐに頭に浮かんだが、誰も指摘しなかった。

 「まるで一億夢遊病状態だ」と、東京の人たちを見て思った。