Saturday, October 15, 2011

オリンパス外国人社長解職の裏の真相:またも日本の企業と新聞による情報隠蔽か?

電力会社に関する件のみならず、日本の大手新聞各社の報道姿勢が如何にいい加減かがよくわなる事例がオリンパスの社長解職劇だ。

今月の14日、新聞各社が、オリンパスの外国人社長(英国人)が就任からわずか半年経たずに解任されたと報じた。一様に、文化的摩擦を原因として報じている。しかし、海外メディアでは違う報道がなされている。 日本の新聞は単にオリンパスの発表を垂れ流しにしているだけで、何の取材もしていないように見える。

今日のブログでは 、ファイナンシャルタイムズ紙の東京特派員(Jonathan Soble)によるウッドフォード前社長へのインタビューに基づく記事と、日本の大手新聞三社(日経、朝日、読売)の記事の内容を比較したい。ファイナンシャルタイムズ紙の記事は有料登録制であること、そして英語であるので、このブログでは簡単に内容を和訳して紹介する。FTの記事のリンクはここ。

簡単にいうと、ファイナンシャルタイムズ記事は、前社長が半年前に社長就任してから、2006-2008年にオリンパスが行った企業買収に際して、「消えた金」があることを知り、取締役会に説明を求めていたこと、解任の2日前に菊川会長に問題についての書面を出していたこと、などを明らかにしている。FTの記事は、オリンパスの企業買収に際しての支払い関係の内部書類も参考にしており、信憑性が高い。

つまり、こtのFTの記事を読む限り、前社長の突然の解雇は、問題を追及しようとする前社長と、問題追及を阻止したい菊川会長をはじめとする取締役会との対立が理由だったことが想像される。

ところが、日本の大手新聞各社は、オリンパスの発表通りの報道だ。「文化の違い」、とくに前社長が、日本の組織文化を理解できなかった点に問題があったという筋書きだ。どの新聞も、実は前社長がオリンパス勤務30年という経歴をもち、日本企業勤めの長い人物であることには触れていない。「消えた金」など、対立の真相は何も取材せず、単に、「和を尊ぶ日本人 対 美徳のわかならない外国人」さながらだ。福島原発事故のあと、外国人が日本を脱出したことを揶揄したのと同じ論調だ。

さらに、オリンパス株価の暴落についても日本各社の分析はいい加減だ。オリンパスの外国人投資家は当然FTの記事を読んでいるだう。これを読む限り、オリンパスが問題隠蔽のために、前社長を追放し、守旧派が実権を奪回した、ということになるので、株主の利益がさらに阻害されるとみて、株価がさがっているという分析が成り立つ。日本の新聞はこういったことには全く触れていない。

大企業・政府の広報機関のような日本の新聞と、自らの取材により紙面をつくるFT紙の差が浮き彫りになっている。

原発事故以降、電力会社の広告費に「買収」され、ジャーナリズムとはとても呼べない日本の大手メディアが問題になっているが、オリンパスの外国人社長解雇報道でも、大手メディアの劣化がはっきりわかる。 


こんないい加減な新聞が「世論形成」に一役買っている限り、日本に将来はない。

資料として、各紙の記事のタイトルの類似・違いをご覧いただきたい。いずれも日付は今月14日。

日経新聞

オリンパス菊川会長「文化の壁越えられない」ウッドフォード社長解職。 リンク


オリンパス菊川会長「ウッドフォード氏は独断専横的」リンク


朝日新聞

オリンパス英国人社長を解任=在念半年で。経営手法食い違い。リンク。


読売新聞

独断的な経営手法に反発。。。オリンパス社長解職。リンク
 「日本人と違った」オリンパスが社長を解職。リンク

ファイナンシャルタイムズ紙 
Ex-Olympus Chief Questioned Payments (元オリンパス社長支払いに疑義)

ファイナンシャルタイムズの記事内容の和訳は以下:

ウッドフォード前社長は、 解職の理由は、彼が取締役会に任命される以前にオリンパスが行った企業買収について調査を始めたことだろうという。今年の7月から、前社長は取締役会に対して以下の件での説明を求めていた:2008年の英国Gyrusという医療機器会社の買収、そしてその前にも3件あった買収にまつわる支払いについて不明な点。前社長がFT記者に見せた関係書類によると、オリンパス内部監査でも、外部の監査(KPMG)でも問題が指摘されていたことがわかる。

前社長は、オリンパス企業幹部が買収を巡って不正な利益を受け取った証拠はないが、多額の金が素性のわからない会社に払い込まれ「消えてしまった」ことを問題視している。

関係書類によると、Gyrus買収に際して、オリンパスは買収額の3分の一にあたる6.87億ドルを、素性のはっきりしないケイマン諸島のAXAMという金融アドバイザーに振り込んだ、という。 この3ヶ月後にはこの会社自体が金融取引会社としての登録を消して消滅。

この件について、前社長は今月11日に菊川会長宛てに、オリンパスの重大な判断ミスと過ちにより、株主に13億ドル相当の不利益をもたらした、と書面にて伝えた、という。 

FT記者のこの件についての問い合わせに、オリンパスはノーコメント。