Saturday, January 7, 2012

東証、東電、オリンパス



読売新聞の1月7日付けのオンライン版の記事によると、東証はオリンパスを上場廃止にするつもりはないようだ。 理由は「虚偽記載の内容は重大だが、影響は限定的」だということだそうだ。長期にわたった組織的で非常に悪質な虚偽だったにもかかわらずだ。どう考えても、ライブドアよりずっと悪質だといえる。そして、気になるのが東証の判断基準だ。記事によれば、「上場廃止になれば、現在の株主が過大な責任を負う」(幹部)との判断があったという。ライブドアの上場廃止を決めた際に東証は「組織的に行なった点で上場会社としての適格性を強く疑わざるを得ない。投資者の証券市場に対する信頼を著しく毀損するものであると認められる」とコメントしたことと整合性がとれない。

ちなみにオリンパスとライブドアが誤魔化した額を比べると、オリンパスが過去の損失隠しに用いた費用は最大1348億円 (産経の記事による)、ライブドアが虚偽記載をしたといわれたのは50億円以下の額。しかも、オリンパスは非常に手の込んだインチキの企業買収劇を繰り返し、損失補てんのための額を捻出しようとする、いわば幾重もの虚偽のオンパレードだ。これこそ、「虚偽のデパート」と呼んでももいいくらいだ。

東証の基準の違いだが、裏にもう一つの本当の基準があると仮定すると、実は非常に整合性があることがわかる。株主にも貴賎上下の差別があるのだ。

ライブドアは小口の一般株主あるいはただの成り上がり者の堀江氏所有の株だったら、上場廃止で紙切れになってもいいが、オリンパスのように大株主が日本のエリート企業の場合は「株主が過大な責任を負うことになる」と¥困るのだ。

オリンパス筆頭株主の生命会社などはそれこそ人様の金を預かり投資していた金融会社なのだから、それこそ大株主としてしっかりオリンパスの経営陣を見張る責務があっただろう。その義務を怠っても、最悪の状況からは尻拭いして貰えるのが日本の(そして特に規制産業の)巨大企業だ。

挙句の果ては、経営陣が組織ぐるみで行った虚偽を明るみにだした前社長が悪者にされるという前代見物のストーリーだ。 国際的にも日本の企業のガバナンス問題として大きく注目されたにも係らず、ウッドフォード前社長を「非行」を理由に報酬減額処分にするというおまけつきだ。日本では正直者が馬鹿をみて、上を見て言われたとおり犯罪に手を染めるものが出世するわけだ。

オリンパスの「上場廃止なし」と、債権者の銀行も含めて丸抱えの東電の救済策とそっくりではないか。東電も大事故を起こしたが、政府はさも「影響は限定的」といわんばかりだ。福島第一の放射性物質で使い物にならなくなったゴルフコースも、東電のせいじゃない、危ない高線量地域から「自主避難」したら東電のせいじゃない。東電と利益共有する東芝・日立、ゼネコン、メディアは事故後も除染やら、お詫び広告でたんまり設けている。しかし、農地そして家畜を汚染された農家や酪農家は、国民に汚染された食品を消費してもらわないと経営が成り立たない。

つまり、株主に貴賎上下があるように、国民にも貴賎上下があり、賎しい一般国民は政府が引き上げた放射能基準に基づいて暮らし、東電に言われたように、(例え理由なく計画停電などイカサマをされても)有難く電気料金を払い、さらに東電の不始末の尻拭いに税金を上げられても、大人しく従うしかないのである。放射能は怖いと「放射脳」と蔑まれ、汚染された瓦礫を受け入れたくないというと非国民扱い。

大企業と利益共有する大企業は何をしても守って貰える。そして、それ以外の国民は黙って言われたとおり税金を納め、下らないテレビ番組でも見ていればいい、というのが今の日本の統治構造なのである。


オリンパス上場維持へ東証、違約金求める方向

東京証券取引所は、有価証券報告書に虚偽の記載をしていたオリンパスの株式について、上場を維持する方向で調整に入った。月内にも最終決定する。
 損失隠しが10年以上にわたるなど、オリンパスの社内体制に問題があることを投資家に周知した上で、違約金の支払いを求める方向で検討している。
 東証で、企業の上場審査や市場の監視を行っている「自主規制法人」が、オリンパス経営陣など関係者からの聞き取り調査をほぼ終えた。月内にも臨時 理事会を開き、上場維持を最終決定する。「上場廃止になれば、現在の株主が過大な責任を負う」(幹部)との判断もあるとみられる。
 だが、株式上場のルールを破って市場の信頼を傷つけたとして「上場契約違約金」1000万円の支払いを求めるほか、社内の管理体制や情報開示に問 題があることを投資家に知らせる「特設注意市場銘柄」にも指定する方向で検討している。特設注意市場銘柄に指定された場合、オリンパスは3年以内に社内の 管理体制などを改善しなければ、上場廃止となる。東証の調査では、損失隠しは一部経営陣だけで、極秘に行われた。損失隠しを行わなくても債務超過には陥っ ておらず、増資などを狙って株価を意図的につり上げてはいないことなどを確認している。東証は、「虚偽記載の内容は重大だが、影響は限定的」(同)とし て、現段階での上場廃止には当たらないとみている模様だ。
(2012年1月8日03時11分  読売新聞)リンクはここ

東証がライブドアを上場廃止にした際の理由は

東証は13日、ライブドアとライブドアマーケティングの株式を上場廃止することを決定した。両株式は3月14日から4月13日にかけて整理ポストに移管された後、上場廃止になる。

ライブドアとライブドアマーケティングの容疑について東証では「組織的に行なった点で上場会社としての適格性を強く疑わざるを得ない。投資者の証券市場に対する信頼を著しく毀損するものであると認められる」とコメントしている。


なお、ライブドアでは今回の告発について容疑内容を公開した。容疑は、2003年10月1日~2006年9月30日の連結会計年度に、本来であ れば3億1,278万円の経常損失が発生していたにも関わらず、売上計上に認められないライブドア株式売却益37億6,699万円や、ロイヤル信販と キューズ・ネットに対する架空売上15億8,000万円を計上するなどして連結経常利益を50億3,421万円と虚偽の記載を行なったというもの。引用のソース記事の リンクは
ここ






年が明けて

日本が置かれている現状を前に、めでたいとい気持ちにはなれない2012年の幕明けだった。日本はどうなるのだろう、というのが31日に就寝する際に頭に浮かび、1日に目が覚めてもやはり頭にこびりついたままだった。

元旦早々の地震、地震が原因とみられる福島第一4号機使用済み燃料プールの水位低下は、野田政権の「冷却状態」の達成、「第2ステップ収束」という広報以外の意味を持たない言葉の欺瞞を白日にさらした。

内閣官房参与を抗議の辞任をした、東京大学教授小佐古敏荘(こさこ・としそう)氏が5月に米紙ウォールストリートジャーナルのインタビューで話した通り、秋の収穫を迎え食糧汚染の深刻さがわかってきた。とはいえ、政府が少ないサンプルでの食品検査しかしていない以上、実際の汚染状況を過小評価している可能性があることは否めない。また、放射性物資はセシウムだけではないにもかかわらず、政府も大手報道機関も国民を啓蒙することはせず、ひたすら通常の生活を続けさせることに重きを置いている。

12月には東京に数日間戻り、友人・知人とも再会を果たした。街を歩きながら不思議だったのは、あまりにも皆普通にしていることだった。一方でガイガーカウンターでは事故前よりも高い数値がピッピとはじき出される。福島原発事故による放射線被害を心配する人たちのことを「放射脳」と揶揄するのは、すでにTwitterなどで見て知ってはいた。

何事もなくクリスマスセールをエンジョイする幸せそうな人々の様子をみると、自分と家族にとって重大な情報に対しても受動的な彼らを責める気には到底なれない。子育て、仕事、住宅ローン、長時間の勤務・通勤をしていれば、新聞の見出しを信じる方が効率的に違いない。

そして、新聞社やテレビ局の人間もその大半はやはり「なんとかなる」と楽観視しているに違いない。(とはいえ、自分らは原発の50キロ圏外逃げておきながら、枝野元官房長官の嘘の片棒を担いだ罪はいずれ国際的にも断罪されるであろう。)

だとしても、どうしても引っかかるのが、なぜ自分の頭でモノを考えようとしないのか、という点だ。日本人はかねてから、食品の安全などには神経質な国民だ。この点ではドイツ人に似ているともいえる。ところが、どうしてドイツと日本ではここまでも福島原発事故後の反応が違うのか?もちろん、日本には大きな原発利権が存在し、メディアと政治を牛耳っている。ドイツではSiemensが原発に関わっていたとはいえ、東電のようにメディアと政治を操っているわけではない。こういう構造的な違いはもちろん重要だが、なぜ国民の大多数がエックス線を浴びてはいけない妊婦が、福島原発の放射線だと浴びても大丈夫なのか、という矛盾を無視できるのか?この思考停止は何からくるのか?

福島原発事故のあとのプロパガンダの一つに、(正確には記憶していないが)線量が高くなっても東京だったら、一日の線量が胸部レントゲンを一回浴びる程度であるなど 、やたらレントゲンの例が使われた。じゃあ、どうしてレントゲンのときのように若い女性だったら腹部に鉛のエプロンをしなくてもいいのか?妊婦は浴びちゃまずいじゃない、とすぐに頭に浮かんだが、誰も指摘しなかった。

 「まるで一億夢遊病状態だ」と、東京の人たちを見て思った。

Monday, November 28, 2011

Japan’s Complacent Media and the Myth of Cultural Uniqueness



Michael Woodford, the former British CEO of Olympus is back in Tokyo to meet with the Olympus board members.  While in Tokyo, he gave a press conference at the Foreign Correspondents’ Club.  When a journalist asked him why he had not gone to the Japanese authorities when he first learned about potential wrongdoings by his predecessors, Woodford answered with a rhetorical question: Does anyone the room believe that such action would have been effective?  The Olympus saga raises grave concerns not only about corporate governance but the transparency of any large Japanese organization. 

The most interesting aspect of the Olympus saga has been the reaction of the Japanese mainstream press.  Their first coverage of Woodford’s dismissal was to repeat verbatim the Olympus’s official announcement:  Woodford was a foreigner who didn’t understand Japanese culture and proved dysfunctional.  Even after various British and American newspapers published detailed stories, Japan’s mainstream newspapers did little more than summarize foreign news coverage.  It was only after the free fall of Olympus stock price that they started following the story more earnestly.

The silence of Japanese mainstream papers is especially surprising, because a Japanese monthly magazine, FACTA, first broke the story of accounting irregularities in Olympus’ M&A deals back in July.   Since the writer of the FACTA article was a former journalist for Nikkei, a major business paper, the question arises why mainstream newspaper journalists have been so reticent to pursue this story. 

The answer has a lot to do with the structure of the media in Japan.  Japanese newspapers have a strong incentive to underplay stories that reflect badly on those corporate clients who buy their advertisement slots.  In all countries, businesses exert financial pressure on newspapers.  But when there is competition in the market and in politics, it creates space for a free press and lively debate.  In Japan, the lack of any such competition makes financial pressure on newspapers much more insidious.  Unlike in the US or UK, there are no independently owned national newspapers.  In Japan, a handful of national papers and TV networks own one another and form very close-knit media conglomerates.  TV networks, whose main revenue source is advertisement, are even more vulnerable to corporate pressure.  Moreover, a mammoth advertisement company controls a large bulk of the flow of advertisement money in Japan.  TV networks depend on advertisement companies for their revenue.  This vulnerability feeds through to the major newspapers that own the TV networks. 

As far as the Olympus case goes, Nikkei and Asahi were visibly less critical of Olympus in their coverage.  Not surprisingly, Nikkei and Asahi, received more advertisement contracts from Olympus than other papers.  Nikkei received the most amount of ads from Olympus, and Asahi came second.  Asahi also benefited from Olympus sponsoring of one of the TV programs in TV Asahi.  I hasten to add that Nikkei was the only paper that printed an exclusive and defensive interview with Olympus chairman Kikukawa, who hired and fired Woodford. 

The complacency of the media produces grave consequences for Japan well beyond the Olympus saga.  It has hindered debate about the causes and consequences of the Fukushima nuclear accident.  Journalists from the mainstream press hardly question Tepco—the owner of the crippled nuclear power plant despite its record of concealing accidents and inconvenient data.  Immediately after the accident, Tepco announced that they would be taking out advertisements in all major newspapers to apologize for the accident.  Tepco, which has a regional monopoly and no need for advertisement, has one of the biggest advertising budgets. 

The complacency of the press undermines Japanese democracy.  The combination of the ownership structure of media conglomerates and collusion of interests within the corporate sector makes Japan a society where consent is easily manufactured and dissent suppressed.  The press often uses ‘Japanese virtues’ and ‘Japan’s cultural uniqueness’ to cover up these facts.  It is not Japanese to disagree or challenge the authorities, the story goes. The ruling Democratic Party of Japan (DPJ) was aware of some of these problems when in opposition.  It had vowed to end the debate-stifling cross-ownership structure of the Japanese media.  When they finally came to power in 2009, the time seemed ripe to democratize the Japanese media.  Unfortunately, after facing a very hostile press, the DPJ government quickly caved in. 

The Fukushima Accident has, however, had one silver lining.  It has pushed some Japanese newspapers and companies to fight back.  More citizens have begun to realize that much of the press coverage has been mere PR rather than journalism.  This has created an opening for some newspapers to challenge the market share of the two largest national papers.  Japanese language editions of foreign press are also increasing the competition in the information market in Japan as evidenced in the recent Olympus saga.  Only by destroying the cozy relationship in Japan between the press and powerful organizations is there any hope of building a free, safe and prosperous society.

Thursday, October 20, 2011

日本の病理:日経新聞も日本生命もオリンパスと変わらない

今回のオリンパスの不明瞭な買収劇は世界的に注目を浴びるような事件に発展しつつある。10月20日米国東部時間午前10:17のロイターの配信によると、オリンパス前社長のウッドフォード氏は新たな事実関係を掴み、それを英国のSFO(Serious Fraud Office 国際的犯罪などを担当する重大不正捜査局)に提出。SFOは、ウッドフォード氏に身辺警護の必要などについて警察に問い合わせるよう勧め、前社長は警察に相談中とのこと。警察の保護が必要になっているということは、「反社会的組織」の関連を裏付けるような情報があるということであろう。日本では株主総会といえば総会屋の活躍の場であったが、総会屋の締め出しが厳しくなるとともに、手口が変わっていったことと今回の買収劇にも関連があるのかもしれない。

ウッドフォード氏出身の英国ではファイナンシャルタイムズ紙が積極的に報道しているのみならず、テレビのチャンネル4のジョン・スノーのニュース番組にも前社長が登場して、インタビューを受けるなど、大きく報道されている。米国でもウォールストリート紙といったビジネス紙そして一般紙のニューヨークタイムズ紙も大きく取り上げている。日本の一企業ということを超え、日本のコーポレートガバナンスの問題として取り上げられている。日本の大企業全体の信頼に関わる問題に進展しかねない。

英国のチャンネル4でウッドフォード氏がはっきり言明した一点は重要だ。彼は「私は日本が大好きだ。日本人の多くなまともな不正を行わない人たちなんです。だからこそ、私は取締役たちの言動に大きな戸惑いを感じるのです。日本には沢山の美徳があるけれど、西洋的なのも(透明性という意味)を少し取り入れることで日本自体も得るものが非常に多いのではないかと思う」と。良心のある日本人らがこれを肝に銘じて、闘う必要があるのではないか?ちょっと考えれば、透明性が西洋的なもの、なんていわれること自体が恥ずかしいことではないか。

透明性を妨げるものは、「日本人」でも「日本の誤った美徳」でもなく、情報や権力を握る一部の日本人の「私欲」以外の何ものでもない。これを「日本の組織風土」などといって、大衆を洗脳してきたのだから許しがたい。 今日のブログではこの洗脳の先頭に立ってきた日本のメディア、そして、能力のない経営陣に甘い大株主としての生命保険に焦点をあてたい。特に今回のオリンパス騒動に関しては、日経がもっとも関係ありそうなので日経に焦点をあてるが、オリンパスや東電が「日本の病理」の象徴の一つにすぎないように、また日経も「病理」の一つにすぎない。朝日や読売もまったくしかりだ。

そもそも今回のオリンパスの不明瞭なカネの流れを指摘したのは月刊誌FACTAの8月号だ。しかもFACTAは、6月にオリンパスにも公開質問状を出したり、積極的に問題を顕在化させようとしてきた。ここで非常に大切なポイントは、FACTAの発行人の阿部重夫氏もスクープを抜いた山口氏も両氏とも元日経新聞の記者だという点だ。山口氏は日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞証券部記者を経た株式関連のプロのジャーナリストだ。

ここで浮かぶ疑問点は三つ。一つ目は、なぜ現役の日経新聞記者らにはスクープ記事どころか後追い記事さえも書くことができなかったのか?二つ目は、なぜ、日本の証券アナリスト達は山口氏のようにオリンパスの買収の不自然さを指摘しなかったのか?三つ目は、なぜ、日本生命のような大口株主が大きな損失を出した買収に疑義を挟まないどころか、FACTAのスクープ以降も何も言わなかったのか。

日経新聞とオリンパスの関係
10月19日つけのFACTAオンラインは(リンク)、日経がオリンパスの菊川会長をかばっている節があることに言及している。
フィナンシャルタイムズ(FT)やウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、ニューヨークタイムズなどで、菊川会長らの嘘が暴かれ始めた。前社長 に企業不正を暴かれそうになって、解任の強硬手段に踏み切ったというのが真相だと。自力で調べる気のない日本のメディアまでそれを引用しだしたから、オリ ンパスの株価は炎上した。
形勢不利とみた菊川氏は、頼みの綱の日経にすがる。18日夕刊の「海外買収の手数料、適正」という菊川氏の反論記事を独占掲載したのがそれだ。虫唾が走るような「御用新聞」根性ではないか。まさか、10月24~25日に開く日経フォーラム世界経営者会議に菊川氏が講師として出席するので、かばおうとしているなんてことがあるとは思いたくない。
 オリンパスの社外取締役の来間(くるま)紘氏の経歴であるが、彼は慶応大学卒業後、日経新聞に入社、専務取締役まで上り詰め、そのご日経BPの副社長を務めたのち、系列の愛知テレビの社長を務め、今年の6月末にオリンパスの社外取締役に就任している。2007年の愛知テレビ社長就任の際に、日経新聞の顧問に任命されている。

相次ぐ企業買収の失策で損失がでているオリンパスがメディア対策として日経の大物OBを受け入れたと見られてもいたし方ないだろう。実際、日経における今回の社長解任のニュース、そしてそれ以降の記事を見ても、真剣に取材をしているとは見受けられない。日経の10月20日の「オリンパス解任騒動、海外メディアが相次ぎ続報」という記事見出しには失笑した。

日本生命の不作為

金融ビッグバンで生命保険業への新規参入が起こったが、歴史的に日本の生命保険会社は日本のコーポレートガバナンスを曖昧なものにする一役を買ってきた。今回の日本生命が良い例だ。日本生命がそうであるが、もともと生命保険会社は株式会社ではなく、相互会社、つまり契約者が主の会社形態をとっている。しかしながら、契約者には顧客としての意識しかなく、株主総会に匹敵する会合には社員が出席してきたといわれている。

金融ビッグバン以前は新規参入もなく、生命保険のビッグ2の第一生命と日本生命は、世界的にも巨大な生命保険会社として、多くの大企業の筆頭株主を務めてきた。株主ではあるが、それと交換に、大企業の社員を生命保険の顧客として抱え込むことが事実上許されていたために、持ちつ持たれつの関係ができていた。大企業に勤めた経験のある人ならばわかるだろうが、生命保険のおばちゃんが自由に職場に出入りしていたのはそのためだ。

つまり、持ち主が持ち主意識を持たず、経営陣への監視が全くなかったのが日本の生保なのだ。そのような特異な組織がこれまた日本の大企業の筆頭株主であるのだから、まともなコーポレートガバナンスなど無理な話なのだ。

今回、日本生命は筆頭株主でありながら、全くオリンパスの業績に関しても、社長解任についても無頓着であった。大騒ぎになり、やっと重い腰を上げたように見えるが真剣でないことは明らかだ、。外国人株主らが東証に対して、追加情報開示を要求する書面を出したにも関わらず、日本生命は単にオリンパスに対して「十分な説明」を求めただけである。ブルーンバーグが詳しい。リンクはここ

昔、『Noといえる日本』などという本があったが、今、日本が必要としているのは『Noといえる国民』だと考える。東電やオリンパス、いい加減な新聞社や金融機関にNOというべきではないか?

Monday, October 17, 2011

日本の大新聞の死:オリンパス買収劇のきな臭さを最初にスクープしたのはFACTA

日本の大新聞は相変わらず、オリンパスに気兼ねしながらの報道。大体、海外メディアに出し抜かれたどころではなく、もう3ヶ月前に週刊誌がすっぱ抜いていた企業の大スキャンダルを全くスルーしていたという事実には驚きを隠せない。といいたいところだが、実は、もう有り余るくらいに類似のケースを見ているので、ちっとも驚かなかった。東電の件といい、日本の大新聞が大本営報道という世論操作と政府・企業広報の道具と化してしまっていることは明らかなようだ。FACTAのスクープはもと日経新聞記者の阿部氏。ジャーナリズムは新聞をやめてからでないと無理なようだ。


FACTAの8月号のカバーストーリーは:


オリンパス 「無謀MA」巨額損失の怪
零細企業3社の買収に700億円も投じて減損処理。連結自己資本が吹っ飛びかねない菊川体制の仮面を剥ぐ。
内容はFACTAのオンライン版で読むことができます:リンク


ここで興味深いのは、今回、菊川会長に突如解任されたウッドフォード前社長が、そもそも自分が取締役会に加えられる前にあった海外企業買収に興味を持った理由だ。この辺の事情は米紙ウォールストリート紙が書いているが、FACTAのスクープを見て、詳細な調査を決心したようだ。


日本語版から関係箇所を紹介したい。記事へのリンクはここ


同氏によると、菊川氏との決裂につながった疑念が生じたのは7月、月刊誌「FACTA」がオリンパスによる日本の小企業3社の買収について疑問を呈したと きだった。この3社は2006年から08年にかけて約700億円で買収された。1社は「ヒューマラボ」というフェースクリームやサプリメントなどのメー カーで、それ以外の2社は、医療廃棄物のリサイクルを行う「アルティス」と、電子レンジ用容器のメーカー「NEWS CHEF」だ。同誌は、売り上げも少なく、特に際立って価値のある資産があるわけでもない非上場企業に対して、オリンパスがなぜ大金を支払うのか不可解だ としていた。

FACTA発行人であり、元日経新聞記者の阿部重夫氏はFACTA8月号の記事以前にオリンパス会長にインタビューを申し込み、当然ながら断られる。阿部氏がオリンパスに宛てた書面には一つ重大な事実が隠されている。日経新聞系列の愛知テレビ社長を退任した人物来間紘氏)が、オリンパスの取締役におさまっていることだ。日本において、企業とメディアの癒着がどのように起こるのかがよくわかる。

FACTAleaks――オリンパスへの公開質問状と宣戦布告

2011年07月15日

念のために申し上げましょう。日本経済新聞系のテレビ愛知社長を退任した来間紘氏が、オリンパス取締役に就任されました。来間氏は小生の尊敬する先輩で す。菊川会長以下の経営陣の方々は、FACTAおよび小生がどういうジャーナリズムかをご存じでなければ、来間取締役にお尋ねください。
http://facta.co.jp/blog/archives/20110715001009.html



今年の4月からの学習指導要綱では、小学校で新聞を教材にしての授業などを行うことにしたようだが、先のある子供たちに、「善意を装い悪とつるむ」かのごとくの日本の大新聞を読ませることに、私は大反対だ。

解任されたウッドフォード前社長が菊川会長に宛てた手紙の和訳

***新しいブログ記事:「日本の病理:日経新聞も日本生命もオリンパスと変わらない」も合わせてご覧ください。http://japanprof.blogspot.com/2011/10/blog-post_20.html


ニューヨークタイムズ紙が、先週金曜日に突然解任されたオリンパス前社長、ウッドフォード氏が菊川会長と取締役会宛に出した10月11日付けの書面をオンラインで公開しています。日本の新聞が全く報じないその内容を以下で和訳しました。非常にテクニカルな金融取引の内容は飛ばして、まとめ部分と、書面の最後の(菊川会長ともりひさし氏に辞任を迫る)結論部分は全訳してあります。英語の読める方はニューヨークタイムズ紙で実物をご覧ください。このリンクで書面そのものがダウンロードできます:

これが問題の書面の1ページ目。10月11日付けで、「手紙その6:企業買収に関連する重大なガバナンス問題」と題されており、菊川会長宛てに13ページの書面。会長宛であるが、最後のページに名前が載っている取締役会前メンバーにもコピーが同時に送られている。この文の書き出しからわかるように、ウッドフォード前社長は菊川氏と英語の愛称「トム」と呼んでいる。

1ページ目

 最後のページが以下。ここの名前のある取締役会メンバーにはこの「手紙6」という書面が同時に送られている。書面の中で明らかになるが菊川会長と一緒に買収に関わった「Mori Hisashi」氏の名前が筆頭にある。
 「手紙その6:企業買収に関連する重大なガバナンス問題」

トムへ、

上記の件で森さんと貴方に宛てた手紙、そして9月30日の取締役会で言ったように、オリンパスの企業買収にまつわる非常に重大なガバナンス問題を調査した結果を取締役会とE&Yのグローバル幹部経営陣に報告をしますと約束しました。やっと、Moriさんから貰った資料なども含め、事情を詳しく調べることができました。

9月30日の取締役会で説明したように、非常に気になる点が数点あったのですが、取り急ぎ、特にわが企業そして株主に大きな損失を与えた下記の2点に焦点をあてて調べました。
1)AXES/AXAMの二社の金融顧問会社に、GYRUS買収の際に支払われた6.8億ドル以上の額のカネの問題。
2)わが社が買収額を決定して投資を行って6ヶ月以内にALTIS, HUMALABO, NEWS CHEF 三社の価値が6億ドル近く減少したこと。

私がこれらの件の調査をするに際しては、問題の性質と複雑性のために、社長としての私に、独立の立場からアドバイスをしてくれるよう、プライスウォーターハウス(PwC) 社を雇い、特にGYRUS買収の際のAXESとAXAMとのお金の流れ、契約を精査してもらいました。PwCの30頁にわたるリポートは同封してあります。

10日前くらいまでは、東京でMoriさんとPaul Hillman と話しもしましたし、私は会社として解決に向けて進むために必要な共通認識を共有できることだろうと思っていました。ところが、PwC社のリポート内容は関係者の非をあまりにも明らかにするものであり、わが社の企業上層部の入れ替えなくては解決があり得ないことがはっきりしました。

とこのあと、2頁目では、AXESとAXAMとの2006年の詳しいお金の流れ・契約内容などについて。この頁の最後にまとめがあるので、それを訳します:
Review Findings (リポートで検証された点):
1)弁護士による法的なアドバイスはきちんとあったものの、AXESとAXAMに支払うことになった金額が相場的に正当なものであるかの確認に関しては専門家のアドバイスは受けないまま、契約内容を決定。
2)AXESという会社に関して、その経歴など調べはなされなかった。(ブログ筆者注:AXESとAXAMの取引にはキャッシュのみでなく、株式譲渡も含む)

3頁では、同じくAXESとAXAMとの2007年の支払い・契約内容について、最後のまとめが以下:
1)2回めの契約に関しては、弁護士も雇わなかった。
2)またしても金融サービスの対価が相場に照らし合わせて正当なものであるかの確認もなされないまま。
3)取締役会での承認のないまま、会長の菊川、そして取締役のMoriHisashi氏と取締役監査役YamadaHideo氏三者の稟議のみで契約に署名。契約後5ヶ月後に、事後的に取締会の承認を受けた。
4)契約ではさも企業買収額の最大5%がAXESとAXAMの報酬額のように書かれているが、契約書面での言い回しのために、実は5%をかなり上回る額になるようになっていた。
5)PwCによれば、類似のサービスへの報酬は通常買収額の1%。ごく稀な特別な場合でも2%という。つまり、買収額が20億ドルだったGYRUSの場合は、報酬は2000万ドルから4千万ドルになる。
6)ところが、2008年2月の買収時、報酬は1.87億ドル。つまり買収額の10%であった。

4頁でさらにまとめが:重なる部分があるので省略。

5-6頁では、オリンパスのグローバルな再編の結果、買収したGYRUSグループ を単独の上場企業としない方針が決定。このためにAXESとAXAMとの交わした契約上、報酬の一部がGYRUS株の譲渡で支払われていたために問題が生じた。これがどう処理されたかについての調査結果。長いので全文和訳しませんが、特に重要なのは、書面で1.5とされたセクションの(ii)と(vii):

(ii) 2008年7月31日には、このために雇ったKPMGとWeil, Gotshall & Mangers (WGM)が きちんと’した対策をオリンパスに提示。株の分は現金支払いで解決することが一番望ましい、との内容。
ところが、オリンパスはこの忠告を無視して、税金対策上どうしても現金払いでは嫌だというAXESとの交渉で優先株に交換。

優先株への交換に際しては、外部の専門家のアドバイスはなしに、先方との話し合いで合意。

(vii) 先の合意から2ヶ月しないうちに、2008年11月25日にAXAMは優先株を買い取ってくれとオリンパスに連絡。優先株の価格設定については、オリンパス側の提示価格はSHINKO証券が担当し、AXES/AXAMの主張する額と、SHINKO証券の試算額の中間で合意。取締役会も2008年11月28日に承認。

 6頁の最後:
オリンパスの担当者らは、報酬として譲渡されていたGYRUSの株オプションが上場廃止に基づき問題となった ことを解決する際に、プロの忠告を無視し、優先株と交換。しかも、ケイマン諸島に本社登記がされているAXAMに関してなんらの前調べもしなかった。

などなど非常に細かく、如何にきちんとした手順を踏まずにいい加減な合意が繰り返されたかを、外部の監査組織の調べにもとずいて淡々と記録。ALTIS, HUMALABO, News Chefの買収においての問題点については9-10頁に詳しい。ここでの問題は、買収し終わってまもなく、3社の価値が投資額の25%まで下がってしまった、ということ。

11-12頁には結論として:

GYRUSの買収は、PWCの調査結果から明らかにするように、最悪な過ちと尋常ではない判断の欠如の連続だった。ALTIS,HUMALABO,NEWSChefの買収と合わせると、驚くべきレベル(13億ドル)の株主利益の破壊といえる。先日、UBS銀行のロンドンの銀行の規定を破り、不良トレーダーが膨大な損失を出し、結果として経営幹部が辞任した例に匹敵する。GYRUSに関する問題、そして全く価値のない企業三社の買収に際して、最も私が問題視するのは、これがオリンパス社の経営最上層幹部により行われたという点である。

トム(菊川会長)、9月29日にの会合で、貴方はALTIS,HUMALABO, NEWS CHEFの買収についての自分の判断の甘さを認めましたが、オリンパスという一流上場企業が、7億ドルという金額を誰がオーナーなのかもはっきりせず、外部監査法人も利益享受などがあったかを確認できないようなケイマン諸島の会社に支払ったということが、私から見て尋常ではく、正直いって信じられないほどです。これが日本の、そして世界の株主にわかれば、わが社の信頼は大きく傷つかざるをえません。PwCリポートが指摘するように、ケイマン諸島のAXAMは、オリンパスが最後の支払いを済ませた3ヶ月後には、金融会社としての登録料未払いで、登録を取り消されているのです。

 あまり重要でないパラグラフは抜かして、最後のパラグラフが:

会社(の存続)第一に考えると、もっとも望ましいのは、貴方とMoriさんが、想像に難くない大変なことではありますが、責任を取ることです。 問題解決のためには、あなた方二人が取締役会に辞任届けを出す以外の方策はないのです。こうすれば、オリンパス社にダメージの少ない解決法を見出すことも可能でしょう。もしも辞任をしないということでしたら、社長として株主への責任を果たすために、企業内のガバナンスに対しての問題提起を関係当局に起こす義務が私にあります。

明日東京に戻りますが、東北に行く予定があるので、貴方とMoriさんと金曜日にお会いし、方策を話し合いたいと思っています。(ブログ筆者注:この金曜日にウッドフォード氏は解任)

マイケル・ウッドフォード

Sunday, October 16, 2011

日本のメディアの劣化:オリンパス社イギリス人社長解任劇続報

続報です。ちょっと前に産経新聞と毎日新聞がネットで、オリンパスについて、今までと全然違った記事を配信。

「不適切行為の調査したら解職された」 オリンパス前社長が英紙に主張(産経)、オリンパス:前社長「不明朗買収調査で解職」 (毎日)などと威勢のいい見出しはついいるものの、中味は情けなくも、このブログで紹介したファイナンシャル・タイムズ紙の記事の紹介!産経の記事のリンクはここ


毎日新聞の記事へのリンクはこちら

驚くべきことに、産経も毎日も自分らでは何も取材をしていない!



夕べのブログではファイナンシャルタイムズ紙の記事のみを紹介したが、ウォールストリートジャーナル紙も、オリンパスの過去の企業買収に関して不明朗な点があったことで、ウッドフォード社長と菊川会長をはじめとする守旧派が対立したことが、突然の解任の背景にあると、類似の内容の記事を10月15日に配信している。ウォールストリートジャーナルではJuroOsawa記者がやはり、しっかりとウッドフォード前社長に直接インタビューしている。

どうして日本の大手新聞は直接前社長にインタビューをしないのか?オリンパスに気兼ねしているのか?どうして、他の新聞社の記事を丸写しにして、記事を気取れるのか?


原発、放射能汚染の報道にしたって同じ事。記者会見の様子を見ても、まじめに取材して質問している人はほとんど大手新聞の記者ではない。これも岩上安身のUstでの動画などで初めて目に見えてわかったこと。


日本のメディアの劣化については、田中龍作、畠山理仁、上杉隆、魚住昭、鳥賀陽弘道、岩上安身諸氏が、文字通り、口を酸っぱくして語ってきたテーマだ。つまり、オリンパスの突然の外国人社長の解任劇を巡る日本国内の報道も、「またか」という類の話である。

大手メディアは単に劣化しているだけでなく情報操作をしているので、そのパターンを見抜く力を養うことも大切だ。文化論をもちだしてきたら、まずは「眉につば」である。サブリミナルなメッセージは、日本人だったら企業の日本人幹部を、あるいは政府を信じるべきである、という、いわば洗脳だ。

日本の将来を少しでも明るくするためには、大手メディアの操作から自由になり、きちんと自分の足で取材をしている代替メディアの応援をすることが大切な第一歩だ。